もう職場で「叱る」ことはできない
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今年のはやい時期にいくつか事案をいただいて、その内容が 「社内にコーチングを導入したい」という話だったんだよね。
コーチングの研修をしたいとか、管理職向けセミナーをひらきたいというお話は、よくあったんだけど「コーチングを導入したい」という話は、しばらくぶりだった。
で、なぜコーチングを導入したいという話になったのか?というと、社内の指導方法をいままでの「上意下達」的なやり方から、コーチング的なやり方にかえたいという話だった。
ふむふむ。
まぁ、よくある話しである。
が、コーチング研修をやりたい というのと コーチングを導入したい というのとでは、全く話がちがう。
研修は基本的に、コーチング的会話をするかしないかは個人にまかせられている。
でも、「コーチング導入」というのは、半ば強制的に「指導はコーチングを中心にしなさい」といっているようなもの。
会社にそれだけの熱意というか覚悟があるのかな? って話を念のためにしてみると ちゃんと熱意も覚悟も予算(大事!)もあることがわかったんだよね。
なぜ?この会社はこれほど「コーチング導入」に熱意があるのか?
それは、「部下指導のやり方によっては、訴訟リスクがあるから」なんだよね。
叱責はパワハラなのか?
世の中の空気みたいなものは、時代とともに変わっていて 過去はOKだったものが 今は完全にダメみたいなものってある。
そのなかでも、むかしはわりと大目にみられていたけど、最近は厳しくなったもの。
例えば
酒気帯び運転
飲み会の席でのセクハラめいた話
始業前、終業後の準備やあとかたづけのサービス残業みたいな強制時間外勤務
仕事ができないという理由での解雇
不倫
体罰
…などなど、昔からダメなことではあったんだけど、最近は厳罰化されたり 非難が集中したりするようになって 事実上できなくなってしまった というケース。
で、この流れで、「職場での厳しい叱責」というのは、言葉や状況を相当えらばないと 「パワハラである」といわれる可能性が高くなってきている ということだね。
なるほど。
なので、「コーチングを導入」して、「厳しい叱責」という機会を減らしていこうということか。
正しい。僕は、理にかなっているとおもう。
安全をおびやかすような行為や法令違反行為などは、「叱責」という指導方法も必要だとおもう。
しかし、「叱責する」という指導方法を容認しているのであれば いつまでたっても新しい指導方法が社内に根付かない。
なので、「厳しい指導」の中身を変える必要はあるよね。
厳しい指導とは何か?
Photo by Bethany Legg on Unsplash
なぜ、「叱責」という指導方法がつかわれてきたのかというと、即効性がある(と信じられている)からなんだよね。
だから、今後も安全を守る、法令遵守などのケースでは、叱責のような有無を言わさない方法は必要だろう。
でも、仕事でミスをする、失敗する、勤務態度に問題がある、能力が伸びない…などのようなケースは、もう叱るという指導はできなくなるとおもう。
なぜなら もう「叱る」という行為が「指導している」とみなされなくなりつつあるからだ。
昨今は誰でもスマホをもっているわけで、かんたんに会話は録音されてしまう。
つい、叱責がエスカレートして発した、ほんのひとことの言葉が録音されて、訴訟の対象なんかになるとしたら これはとても高い代償をはらうことになってしまう。
「叱る」ことが 指導方法として もはや見合わない方法になりつつあるわけだ。
「叱る」ことの反対が「コーチング」なのか?
僕はコーチングの専門家だけど、「叱責」のかわりが「コーチング」だというのはちょっと早計に過ぎるとおもう。
ただし、コーチングを含めた「定期的な対話による指導法」というのは これからの主流になるのではないかな?とおもうな。
そのなかで、「叱責」にかわるものとして、「指摘をして改善させる」というスキルを磨く必要があるよね。
これは、コーチングの関連領域の「フィードバック」というスキルをつかうケースや、行動科学的な目標設定のスキルなんかが すごく役に立つとおもう。
なんにせよ、職場で「厳しく叱る」ということは なくなっていくとおもう。
たぶんそのぶん「容赦なく指摘され、厳しく評価される」ということになるとおもうけど、まぁ それも世の中の変化だね。
これからは、「的確な指摘」と「改善のためのフィードバック」というスキルを身につける必要があるってことですね。
と、いうことで、また次回!
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