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コミュニティ・ビジネスのヒントが満載 「そして映画館はつづく」フィルムアート社

   


そして映画館はつづく──あの劇場で見た映画はなぜ忘れられないのだろう

 

映画館で映画を観るときは、まず前日とかに「あ、明日は映画を観に行こう」と決める。

そして、どんな映画を観ようかな、と考える。

話題作の上映期間なんかをみて、「これは、まだまだかかっていそうだな」なんて思うと後回しにしたり、ミニシアターの面白そうな映画が、あまり気のすすまない夜の遅い時間に1回だけ上映されるスケジュールをみて悩んだり、あれでもないこれでもないと考える。

よし、これを観ようと決める。

どこの映画館だ?

あ、あそこか。時間は、、、スタートは午後の中途半端な時間かぁ。

お昼を、近くの○○で蕎麦をたべて、余裕をもって映画館に行こう。

見終わったら、書店によって本をみて、それから早い時間からビールでも飲もう。

だったら、あそこに行こうかな。あの店、何時から開いてるかな、、、とか。

 

つまり、僕にとって「映画館で映画を観る」というのは、

映画館を中心として、その周りで半日くらいをゆっくり過ごす体験

のことで、ただ映画のコンテンツを見るだけのものではない。

 

だから、映画館の存在って、重要なんだよね。

 

映画館の存続は、過去にさまざまな危機によって、難しい状態が続いている。

一時期の大変な時期を、少し脱しつつあった昨今に、ご存知のようにコロナ禍で映画館も人が入れなくなってしまった。

 

その「コロナ禍での」全国のミニシアターが、どんなことを考えているのかを取材した本だよ。

この本は、少なくとも僕にとって素晴らしく良い本だった。

 

なぜなら、これからのさまざまな「ビジネスのあり方のヒント」が、本当にたくさんあったから。

この本には、「コミュニティ・ビジネス」のヒントが満載だった。もはや、ビジネス書といっていいかもしれない。

 

ミニシアターの支配人の言葉

圧倒的に面白いのが、ミニシアターの支配人の人たちの言葉ですね。

一部を抜粋してみるね。

 

東京都渋谷区「ユーロスペース」

渋谷自体の街の構造が変わって、学生をほとんど見かけなくなった。

かつては「ぴあ」や「シティロード」が映画を批評性をもって映画をすすめていたが、最近では若い人が何を見ていいかわからなくなったんじゃないか。

 

東京都渋谷区「シアター・イメージフォーラム」

映画館で最大のヒットになったドキュメンタリー映画の「いのちの食べかた」は、今までと全然違うお客さんの入り方をした。

ドキュメンタリー映画は新聞の社会面などに広告記事を出して、シニア層をターゲットにするのだが、この映画はちょうど、食肉偽装事件が大きく取り上げられた時期で、20代~30代の若いお客さんがかなりの部分を占めていた。 現実の感覚に映画の感覚が直結している作品をかぎつけるのは、やはりある程度若いお客さんで、若い人が中心になっていかないと映画も大きく広がっていかない。その構造は昔から変わっていない。

 

東京都新宿区「早稲田松竹」

新作をスクリーンでいち早く見る、ということにお客さんはあまり重点を置いているわけではない。DVDを100円でレンタルできる作品でも、切り口、セッティングが良ければ劇場に来てくれるということが確かめられている。

 

新潟県上越市「高田世界館」

インド映画を紙吹雪などを使って歓声をあげながら見る「マサラ上映」をやっている。そこには単に映画を観るためでなくて人に会うために来ているというお客さまがいらっしゃった。みんなツイッターで知り合っているので、プライベートに踏み込むわけではないけど、よそよそしいわけでもなくて、温かい空間があるという新しい局面に入った。それで、映画館全体で20%ぐらい売上が上がっている。

 

愛知県名古屋市「シネマスコーレ」

コロナ禍で映画館が休館となったときに、映画館を忘れないようにしてくれていたのは、完全に敵だと思っていた配信サービスだった。

リモートでの舞台挨拶は、新しいお客さんにドンピシャリでハマった。舞台挨拶は実は一般のお客さんにとっては実はハードルが高い経験だった。

 

広島県尾道市「シネマ尾道」

2011年の東日本大震災以後は因島や向島もふくめて若い移住者の方々も増えて、「なぜ尾道を選んだのか?」ということをうかがうと「映画館があるからこの街を選んだ」とおっしゃってくれる方もいらっしゃるんですね。

 

大分県大分市「シネマ5」

世の中が「東京」と「それ以外の場所」となり、地方都市が「東京になりそこねた場所」みたいになった。おかげで、田舎は東京にない田舎があって、これもいいもんだという東京に住む豊かな人に享受される場所になった。それはいかがなものかと僕は思っていた。

コロナ禍以降、シネコンっていうビジネスモデルは非常に難しくなっていくんじゃないかと思います。

 

沖縄県那覇市「桜坂劇場」

桜坂劇場はバラエティに富んだ娯楽を提供している場所だと思ってもらいたいんです。

 

これらを読んでいると、ミニシアターというのは完全に「コミュニテイビジネス」だということがわかるよね。

お客さんは、シアターの映画のプログラムが

「なぜ、この映画を観てほしいと思って上映しているのか?」

を理解するために映画館に足をはこんでいるんだな。

だから、その映画が話題作だろうが、旧作だろうが関係ない。

その「なぜこの映画?」の答えに共感する人や、何か言いたい人、なんなら「俺に選ばせろ」と思っている人をひきつけているんだね。

なるほどね。

 

橋本愛の言葉

あと、印象に残ったのが、女優の橋本愛の言葉ですね。

 

「批評を読むようになって映画の見方がぜんぜん変わりましたね。自分ではたどり着けなかった境地を教えてくれたというか。」

「とはいえ、映画館って場所は、行く人は行くし、行かない人は行かない場所だとも思っているんです。」

 

これらの言葉は、別に大した言葉ではないけど、橋本愛みたいな若い女優が、一生懸命勉強している感じが伝わってきてよかった。まだまだ、美少女的なヒロインのような、似たような役どころが多いですけど、もうちょっと年齢を重ねて、いろんな役どころをやってほしいですね。

 

今のリアルなミニシアターの状況がよくわかったし、可能性も感じた。

なにより「コミュニティ・ビジネス」のお手本になるのが、ミニシアターだとわかったので、映画館にいくことが、仕事の延長になる、という言い訳が立つのが嬉しい。

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