被災者やサービスの「スティグマ性」について
目次
熊本の震災とかで、ボランティアとかいろいろあるんだけど、ときどき 非常に違和感を感じる言動や行動があるんだよね。
それは、被災者の人々の「スティグマ性」について、考慮しているのだろうか? ってことなんだよね。
つまり、被災者は「不幸で困っていて助けが必要なかわいそうな弱者」として 扱われたくないはずなんだけど そのようなレッテルを貼って かわいそうな人としてのみ扱うという感じがするときがあるんだよね。
「スティグマ」とは何か?
「スティグマ」とは何かというと、ちょっと辞書を引用してみるね。
スティグマ【stigma】
〔ギリシャ語で,奴隷や犯罪者の身体に刻印された徴(しるし)の意〕個人に非常な不名誉や屈辱を引き起こすもの。アメリカの社会学者ゴフマンが用いた。【大辞林より】
ものすごく簡単にいうと、その「しるし」があることで、「弱者」「敗者」「失敗者」がわかるシンボルのことだね。
たとえば、「生活保護」なんかだと 生活保護を受けることで、社会的弱者であったり、あるいは「敗者」「失敗者」とみられやすい傾向があるよね。
だから 本来なら生活保護をうけるべき人なのに、受けると「敗者」としてみられることが嫌で、違法なブラック労働なんかをやったりする。
つまり「生活保護なんかを受ける不名誉な人間としてみられたくない」っておもうんだろうね。
こういう場合、「生活保護はスティグマ性が高い」というような言い方をしたりする。
おかげで、本来守られないといけない人々が、守られることを拒否するってケースがあったりするんだよね。
サービスとスティグマについて
先日、クライアント先のスタッフさん数名とミーティングをしていたときに、「もっと良いサービスを提供していこう」みたいな話になったんだよね。
で、そこで 「これはできるので、やりましょう」みたいな話になっていって、「足腰が弱い、高齢者用に今ある車イスの台数をもっと増やして使ってもらおう」って話になったんだよね。
僕が「実際、車イスをつかわれるかたって、結構いらっしゃるんですか?」って聞いたら
「車イスの使用をおすすめすると、遠慮されるのか 結構ですっていわれるかたが とても多いですね」
って話がでて
「だから、遠慮されないような すすめ方のトークをかんがえましょう」みたいな話になりかけたので、僕が「ちょっとまってください」と話をとめたんだよ。
「たぶん、こちらに来られる高齢者の方々は、車イスをつかいたくないんだと思いますよ」
って話をして その後 いろいろサービスについて話をして 結局車イスを増やすっていうのは ひとまずなくなった。
つまり、ここでは、高齢者のかたからみて、「車イス」はスティグマ性が高いものなんだね。
(※あくまで、このケースの場合です)
だから、「車イス」どうぞっていっても、みんな車イスにのせられたくないって思っているんだろうね。
僕も一度、車イスにのせられたことがあるけど、いつも乗っているんだったら そうでもないんだろうけど、やっぱり人に押してもらったりするのは 正直抵抗があったなぁ。
もちろん、本当に必要になったんだったら そんなこといってられないんだろうけど、さっきのケースは 「ぜひ積極的につかってください!」ってことだから ちょっと違うよね。
ついつい、サービスや福祉、医療なんかの世界でも、相手を「弱者」としてのみ扱うような考えにおちいりやすいよね。
一面的な「レッテル」の怖さ
被災者の方々も同じで、単純な「弱者」や「かわいそうな存在」「守るべき相手」のような 一面的な感情であつかうのはよくないとおもうよ。
なぜなら、「弱者」「かわいそうな存在」「守るべき相手」のような、レッテルをはると2つの問題がおきやすい。
1つは、「スティグマ性」が高くなること。
本来 支援をうけるべき人達が「恥ずかしいから 大丈夫ってことにしておこう」「あの人達にくらべれば、自分たちのほうがマシなので、とても不便だけど黙っておこう」って空気が流れてしまうよ。
必要な復興やサポートはいきわたるべきで 結局そうすることが 被災していない人々にとっても有益なことになるよね。
もう1つは、「守るべき、か弱き人々」が ニコニコ笑ったり、冗談をいったりすることが 非難されたりしやすくなること。
かわいそうな存在だから、自分が一生懸命ためた少ない貯金から、できるだけ募金した。
ところが、そのお金で被災者がパチンコにいってたらどうおもうだろうか?
「おお、被災者の方が 俺の募金のおかげでパチンコにいけるような余裕ができたんだな。よかったよかった」
っておもう人はあんまりいないとおもう。
パチンコは極端な例だけど、レッテルを貼れば そのように行動することを求めてしまう。
だから、そのイメージから外れた行動があると 「せっかく 募金しているのに どういうことだ! かわいそうな弱者じゃなかったのか?」みたいな感情になりやすい。
かわいそうな被災者として行動することが、なかば強制され、そうでなくなると逆に非難されたりする場合があるよ。
まとめ
何年かに一度、いろんな地方で、大きな地震や災害がおこるよね。
だから 今度は自分が被災するかもしれない。
そのときに、僕はおどおどと遠慮して支援をうけたくない。
当然のものとして、一刻もはやく日常を取り戻したいっておもうはず。
本来そうすることが 誰にとっても1番よいことだよね。
だから、今被災されている人は、そのように思って欲しいし そのように扱う必要があるとおもうな。
今は被災者の人は困っているだろうけど、「かわいそうな憐れな弱者」ってレッテルはちょっと違うはず。
おんなじように、サービスとか福祉をかんがえるときに 単純なレッテルを貼って かえってスティグマ性を高めることがないようにしていく必要があるよね。
今回つかった写真は地震で壊れてしまった阿蘇神社と参道の写真です。
とっても良いところだったので、ぜひ復興してほしいです。
と、いうことで また次回!
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